不安や恐怖が大きいと、たしかに痛みは強く感じられるかもしれませんが、指を切ったり骨折して痛むのは、けっして不安や抑うつといった感情のせいではありません。
そういう意味で 「感情理論」だけで痛みをとらえるには無理があります。
1986年に ゲートコントロール学説 が発表されました。
現在、もっとも広く世界に認められています。
それは脊髄にはあらゆる感覚の伝達を調整するゲート ( 関門 ) があり、触覚、圧覚、振動覚などの無害な感覚は、ゲートを閉じることで痛みとして脳に伝わらないようにする。
一方、有害な外部からの刺激は、ゲートを開くことで痛みとして脳が認識するという説です。
さらに注目すべきはゲートの開閉は中枢からもコントロールをうけているとする点です。
意識や過去の記憶、情動によってもゲートの調節が行なわれているというのです。
痛みとは危険を探知するための原始的な感覚であると同時に、当人の心理状態の影響を受けたものであるといえます。
つまり身体的要因と心理的要因という二つの要因が混在した問題であると理解する必要があります。